ヘルプデスクやサポートデスク用のアプリケーションを調査する際、レビュー記事を参考にして調査するアプリケーション・ソフトウエアをピックアップしました。
参照記事(英文):
The 7 Best Free and Open Source Help Desk Software Tools
|
図1:英文のレビュー記事 |
この記事から、osTicketとOTRSを実際にインストールしまして現行のメールサポートに挟み込むようにセットアップできるかを調査しています。
相談者の要望
相談者の要望は、ソフトウェア製品のサポートをメールベースで行っている状況で「現行の方法は大きく変更したくない」と言う意向に基づいた選定となります。
「メールループに挟み込み、チケットとして動作させられるアプリケーションが望ましい」
サポートイメージは、「
Redmineによるメール対応管理の運用事例(slideshare.net)」と同様となります。
|
図2:メール受信の流れ |
|
図3:メール返信の流れ |
スライドには課題が提起されています。
スライド掲載の課題を、当方でもredmine3.1を使って現象の再現テストと現象確認を行いました。
その結果を踏まえて対応の対応の手間(工数)を考えて代替えアプリケーション候補をピックアップします。
redmineを用いた場合の課題
- 返信時にSubjectについかするチケット番号を誤った場合の問題
- メーラートRedmineを行ったり来たりするのが面倒な問題
- 新たなメールへの返信でいただた場合の問題
- サポートからメールを発信する場合の問題
- ステータスを変更し忘れる問題
- 発信元メールアドレスが記録されない問題
いくつかのヘルプデスク系アプリケーションを調査・テストしたところほとんどのアプリケーションはWeb-UIでのオペレーションが必要となり現行のメール対応のスタイルを大きく変更しなくてはなりません。
例えば、Microsoft Dynamics CRMのようにOutlookアドインを使うことで解決する方法もありますので規模とコストが合えばMicrosoft Dynamics CRMなども候補とすることはできると思います。
今回は、「導入コストは少なく・・・」という要望で対象とはなりませんでした。
osTicketを調査したところ、カスタマーへの返信メールで、新規チケットが作成されてしまいトラッキングができず適用はできそうにありません。
OTRS
OTRS 5 beta 5が出ているのですが、リリースまではもう少し先(3週間後:2015/10/20?)になりそうですのでバージョン4(4.0.13)を使って機能を調査しました。
先の英文の記事では、OTRSのCons(弱点)は管理マニュアルが300ページ以上(OTRS 4.0の日本語管理者マニュアルは665ページあります)あるという点だけでして、機能的には弱点はないと考えてよいとも捉えることができます。
redmineでの6つの課題は、いずれも基本機能でクリアできます。
|
図5:機能一覧 |
- 返信時にSubjectに追加するチケット番号を誤った場合の問題
- redmineと同じく、チケットの錯綜問題が発生します。
- チケットの分割を行って対応します。
- メーラートRedmineを行ったり来たりするのが面倒な問題
- 新たなメールへの返信でいただた場合の問題
- クローズチケットへの返信した際の挙動を設定可能です(再オープン、新規チケット発行)
- サポートからメールを発信する場合の問題
- ステータスを変更し忘れる問題
- 発信元メールアドレスが記録されない問題
- 登録済みユーザ、匿名ユーザ、未登録ユーザを取り扱いできます。
- SLA
- グループ単位(顧客、顧客ユーザなど)でSLA適用を設定できます。
※7番目は、redmineのstart_date/due_dateの機能を使うには手間が必要だっため、追加したチェック項目です。
OTRSを介さずメールでやりとりする場合
ユーザやカスタマーへの返信を全てWebUIだけで行うことは現実的に不都合なことも多々ありますので、メールサポートをトラッキングがどの程度できるかチェックしています。
|
図6:返信タイプの変更 |
デフォルト設定では、外部からのメールは全てタイプが「顧客ーメール外部」となってしまいます。
ドキュメントを参照すると、ポストマスターフィルターを設定することで解決できました。
方法は、サポートメンバーから発せられるメールヘッダの「タイプを変更」するとOTRSは「担当者ーメール外部」として記録することができます。
メールフィルタを使うことで、「担当者からの返信」や「本文中のキーワードを使ってステータスの変更」なども組み込むことができました。
OTRS上からの返信については、デフォルト設定では「OTRS System」として記録されますのでメールアプリケーションから行った返信か、OTRSで返信したかも切り分けて記録することが可能です。
ページ数がとても多い管理者ドキュメントですが、いろいろなケースの記載がありますのでかなり幅広く対処できるのではないかと思います。
その他
SLA機能のテストでは、顧客毎にSLAレベルを分けて応答時間を超えると自動的にエスカレーションできます。
|
図7:SLA設定チケットの自動エスカレーション |
また、OTRS上で対応する場合(フィルタ処理でロックする設定を行えば他にもできます)には、ロック機能で複数の同時対応とならないためカスタマーへの返信が重複することは削減できると思います。
問題点
OTRSは、機能が大変充実しているのですが、残念ながら日本語対応では十分でないところも少しあります。
|
図8:統計レポートの日本語が表示されない |
特にレポート機能では、日本語部分は表示が出ませんしEXCELシートで出力した際も日本語部分は□となります。
デフォルトでは、統計データの部分は使い勝手が良くありません。
OTRSの機能チェックまとめと感想
使い始めは、「直感的でないなぁ」と思ってぼちぼち使い始めたのですが慣れてくると機能が充実していることもあり問題となりそうなところが少ないことがわかってきました。
OTRSは、perlで実装されていますので担当者のモチベーションが問題となるかもしれません。
まとめ
OTRSは、ヘルプデスク・サポートデスクで利用するチケットアプリケーションとしては機能的に問題・課題が少なく利用可能と言えると思います。
ヘルプデスクで利用する際に多少なりの設定が必要となる場合には、ドキュメントやコミュニティ・フォーラムを参照するなどの手間は必要となりますが設定自体は難しくはないと思います。
また、OSSであるため初期導入コストも少ないです。
ただし、どのOSSでも同じですが、アプリケーションはperlで実装されていますのでコードを変更するようなカスタマイズを施す必要がある場合には手間やコストが必要となります。
redmineを使う場合もカスタマイズしたりプラグインを開発する場合には、工数やコストは必要となりますので同様でしょう。
トータルコストを見計らって商用製品かOSSかの判断は必要です。